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January 5, 2007 | 米流時評 | 『楽園通信』デイリー版
Martyring a Monster By Christopher Dickey It is precisely because of the horrors Saddam committed that the trivialization of his death is such a shameful milestone on the road to American perdition. モンスターの神格化 | By クリストファー・ディッキー ニューズウィーク米国版 2007年1月5日 コラム<シャドーランド> | 抄訳 by ysbee サダムが自ら手を下した恐怖の血の粛清とまったく同じ理由で、部族抗争の復讐劇が再現された彼の処刑は、アメリカが墓穴を掘る道程の恥ずべき記念碑となってしまった。 Saddam watch stops Sometime shortly before the new year, my Saddam Hussein wristwatch stopped running. A friend gave it to me back in the summer of 2003, and since then the Butcher of Baghdad’s grinning visage has hung among other curiosities pinned to the bulletin board above my desk, anachronistic, ludicrous and essentially harmless. サダム時計の止まる時 私のサダム・フセイン腕時計は、ミッキー時計のようなチープなみやげ物なのだが、新年の明ける少し前あたりに、ピタリと時を刻むのを止めた。思えば2003年の夏に友人にもらって以来、デスク上のピンナップボードにほかの奇妙なガラクタと一緒に、アナクロで馬鹿げてはいるが基本的には罪の無い体裁で、バグダッドのブッチャーの笑顔はぶらさがっていた。 Saddam was everywhere There was a time, of course, when Saddam’s image was everywhere in Iraq, and the only thing more frightening than his scowl was his smile. His face appeared on billboards and the sides of buildings in countless guises, wearing fedoras, helmets, commando berets, tribal headdresses. Turn any corner and you saw him fighting, exhorting, laughing, praying. Portraits of Saddam hung in every shop and office, and no one dared disrespect them. ユービキタス・サダム その当時のイラクはもちろん、どこへ行ってもサダムの肖像が目に入る時代であり、彼の鉄拳よりも恐怖を与えたものは、唯一彼の笑顔であった。頭にはフェードラ、ヘルメット、軍隊総指揮官のベレー、アラブ部族酋長の被り物をかぶり、ありとあらゆる服装を身につけた数え切れないほどのサダムの肖像が、巨大なビルボードやビルの側面に掲げられていた。どの街角を曲がってもまず最初に目にするのは、戦闘を指揮したり、威嚇的だったり、笑ったり祈ったりしている彼の顔だった。サダムの肖像はありとあらゆる商店やオフィスに掲げられ、あえてそれを侮蔑しようとする者は皆無だった。 Lizard survived by dictator I remember one afternoon in Baghdad in the late 1980s when I was in a store buying a notebook and a lizard scurried along the wall behind the counter. The shopkeeper gave chase, taking off a shoe and trying to smash the little reptile with the heel—until the lizard managed to slip behind the mandatory photograph of the dictator. The shopkeeper froze, arm raised, terrified. The lizard survived. If the shopkeeper had smashed the picture, he might not have. 独裁者に救われたトカゲ そういえば、1980年代後半にバグダッドを訪れた頃のある昼下がりを思い出す。私がちょうど一軒の店でノートを買おうとしていた時だった。一匹のトカゲが、店のキャッシャーカウンターの奥から壁沿いに這い出して来た。店番は片一方の靴を脱いでつま先を手に取ると、そのかかとで小さな爬虫類を一撃しようとして店中を追いかけ回した。トカゲが店の一隅にある独裁者の肖像写真の陰に逃げ込むまで……その途端、店番は凍りつき、ホールドアップのように両手を挙げて恐怖におののいた。かくしてトカゲは生き延びた。もしあの時店番の男が写真をひっぱたいていたら、国家元首冒涜の罪で多分彼の命はなかったろう。 From a monster to a martyr When Saddam was toppled by the U.S.-led invasion, all this fear suddenly seemed almost as ridiculous as the tyrant’s face on a cheap watch, which is why I rejoiced at the time, and why it’s so damn sad that last weekend Saddam Hussein was turned from a monster into a martyr by the manner of his execution. モンスターから殉教者へ サダムが米軍主導の侵略によって潰走したとき、それまでのこのような畏怖心は、その日を境に突然ばかばかしく思われるようになった。ちょうどこの安物の時計の独裁者の顔のように。それが当時私が喜んだ理由である。だからこそ先週末執行された死刑のマナーのおかげで、サダム・フセインがモンスターから殉教者へと昇華してしまったことに対して、どうしようもなく嘆かわしいと思う次第である。 Actually, “lynching” would be a better word, despite the $128 million Washington reportedly spent trying to present the captured dictator’s trial as free, dignified and fair. In the days since Saddam’s necktie party, we’ve had to listen to spin from Washington and Baghdad that is not only implausible but condescending—and absolutely irrelevant to the problem at hand. "There seems to be a lot of concern about the last two minutes of Saddam Hussein's life and less about the first 69 [years], in which he murdered hundreds of thousands of people,” said Tony Snow, the former Fox News face who now mouths the White House talking points. 死刑というよりむしろ「リンチ」 シーア派軍団によって執行された処刑は、実際「リンチ」と言ったほうが当てはまるようなお粗末さである。自由・尊厳・公正を期するため、ワシントン政府が1億2800万ドル(約140億円)もの巨費を投じたと伝えられる、囚われの独裁者裁判の一部始終。しかしながら、あのサダムの絞首刑騒動からほんの数日しか経っていないのに、またもやワシントン、バグダッド双方からのいかがわしいこじつけを聞く羽目になるとは……何よりも自ら手を下した問題に対してまったく関係ないとでも言うような、思わず耳を疑いたくなるひとを小馬鹿にした言い草であった。 「サダム・フセインの最期の2分間の方が、これまで何万人も殺してきた69年間の生涯よりも皆さんにとっては大変な問題のようにお見受けしますね。」かつてのFoxニュースチャンネルの顔で、今やホワイトハウスの論点を代弁する報道官トニー・スノウは、いみじくもこう宣ったのである。 Shameful milestone of American perdition In fact it is precisely because of the horrors Saddam committed that the trivialization of his death at the hands of thugs is such a shameful milestone on the road to American perdition. Washington looks ridiculous saying it was powerless to influence the actions of the executioners that it empowered. Without George W. Bush, they never would have been able to bring Saddam down, much less string him up. Everyone knows that, and anyone with a sense of pride or honor—which do stand for something in the Arab world—will know that. Which is why the last ironic question Saddam asked was so damning: “Is this manly?” he said of the taunts, half smiling, as the trap door opened. He knew he’d won. 米国が墓穴を掘った恥ずべき記念碑 実際今回の処刑は一部始終、部族間の抗争にならず者の手によって死の報復を与えるという、サダムが強いた恐怖政治の実行そのものであり、アメリカが自ら掘った墓穴へたどる道の恥ずべき一里塚である。ワシントン政府が、自ら強力に推進して来た裁判と死刑執行そのものに対して無力な存在だと言うのは、ばかばかしいにも程がある。 ジョージ・W・ブッシュが手を下さなければ、サダムが倒れることは決してありえなかっただろうし、縛り首になることもなかったろう。そんなことは周知の事実だし、アラブ世界を際立たせている民族の自尊心や名誉のためにも、これから先誰もがそう学ぶだろう。 だからこそ絞首台の口が開く間際、半面笑みを浮かべながらサダムが最期に発した皮肉な問いかけ、「これが男らしいことなのか? (Is this manly?)」こう揶揄した言葉が、とてつもなく心に突き刺さるわけである。そのとき彼は、最後はおのれが勝ったということを知ったはずだ。 ▶ Newsweekのサイトで原文記事を読む ◀ ブログ村ランキングにぽちっとひと押し ◀ 人気blogランキングへ一票 ◀ 今年は少しがんばろう! ◀ もうひとつよろしく! .......................................................................................................................................... クリストファー・ディッキー ニューズウィーク誌の国際時事コラム『SHADOWLAND』を執筆するクリストファー・ディッキーは、中東情勢に長けた時事解説のエキスパートである。昨今のきな臭い紛争の背景を探訪する偵察レポートはもとより、9/11やイラク戦争の陰謀論の根拠を探る手記も物にしているので、ブッシュ陣営から見ると、先年「コーラン冒涜報道問題」で渦中の人となったイシコフと並んで、非常に手強い相手のジャーナリストに違いない。しかし彼の賢いところは、例えば 9/11ホワイトハウス陰謀説に関しても、そういう映画を見に行ったよという仕立てのレポートで、自らの意見としてではなく映画作家へのインタビューとして謀略の細部を語らせ、俎上に載せる訳である。これなら当局が危険視しても手が出せない。何しろ彼はあくまでメディアに徹して、世間の事象を媒体として伝えているだけなのだから。 イシコフやジョン・アルターを始めとするNewsweekの名物コラムニストは、真っ向からブッシュ政権の醜悪な陰謀術数を叩き斬るが、クリストファー・ディッキーの場合は小説の手口で、目撃者の語りを借りて細部から大局を描き出す。またタイトリングが絶妙で、北朝鮮の核実験騒ぎの際のコラムには、ブッシュの「Axis of Evil」発言が金小児値(ママ)を暴挙に追い立てたという観点から、「Excess of Evil」と銘打った。思わずニヤリとせざるをえない。こんな痛快な、ジャーナリストの武器をフルに発揮した戦術がお得意なので、一部に通好みの大人のファンが存在していて、サイトでの読者の評価では彼のコラムは常に5点法で4点を獲得している。もちろん私も大ファンであることは、言わずもがなである。米流時評が自信を持って推薦するジャーナリストのひとり。 <『楽園通信』編集長 ysbee> 『楽園通信』で紹介したクリストファー・ディッキーのコラム 注: 彼のひねりの利いたコラムタイトルは、日本語に訳すと意味不明になり英語圏人にしか通用しない凝った名前が多いので、私流に勝手に付けたページタイトルになっています。 ▶ 5/12号「イラン人の手紙・アラビア半島逆ドミノ理論」 ▶ 5/13号「恐怖の三題噺 第1話 / 9.11・イラク戦争・石油危機」 ▶ 5/14号「恐怖の三題噺 第2話/イラン・核武装・第二次冷戦時代」 ▶ 5/15号「恐怖の三題噺 第3話/不法入国・国境警備・軍国主義化」 ▶ 10/5号「中東を塗り替える悪魔の地図/ネオコンの描く新世界」 ▶ 10/10号「平壌シンドローム/被爆したブッシュ外交 北朝鮮核実験・第三報」 以下ブログの本誌です: ▶『楽園通信』本誌カバーページ ▶『楽園通信』全記事アーカイブ ▶『楽園紀行』イタリー編トラベローグ ▶『楽園百撰』ハワイのベスト100 ▶『米流時評』コラム「傷だらけの星条旗 / 米国ジャーナリズムの良心」 #
by ysbee-Mac
| 2007-01-05 15:55
| イラク戦争
January 2, 2007 | 米流時評 | 『楽園通信』デイリー版
By Christopher Dickey NEWSWEEK—WORLD NEWS | JAN. 8, 2007 ISSUE He killed not only Kurds and Shiites but Baathist rivals. His end was ignominious. President George W. Bush was sleeping at 9 p.m. at his ranch in Crawford, Texas, when Saddam Hussein's body plunged through the trapdoor of a gallows in Kadhimiya Prison on the outskirts of Baghdad. 独裁者の死/アメリカに落とす影 By クリストファー・ディッキー ニューズウィーク米国版 | 2007年1月8日号掲載 <ワールドニュース>コラム抜粋 サダムは反対勢力のクルド人やシーアばかりでなく、自身の所属するバース党のライバルまで亡き者にした。かくして彼の生涯は厚顔無恥の復讐劇で終幕を閉じた。 その頃ブッシュは……ジョージ・W・ブッシュ大統領は、テキサス州クロウフォードにある彼の牧場で午後9時にはもう眠りについていた。時を同じくして、バグダッド郊外のカディミヤ監獄にある死刑台では、サダム・フセインの死体が絞首刑の台に開けられた穴からぶら下がった。 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ Facing with his death It was dawn in the Iraqi capital, and the 69-year-old Butcher of Baghdad wore no blindfold. He had carried a Qur'an for the last few steps before his death, looking uncertain, even afraid, according to one of the witnesses close to him, but mouthing words of defiance. He sneered at Shiite guards—the warlord Moqtada al-Sadr's men, by one account. He praised God and, as he neared the gallows, proclaimed, "Iraq without me is nothing." そのときサダムは…… イラクの首都の明け方、69才の「バグダッドのブッチャー」と呼ばれた人物は、死刑囚が刑執行時に被る黒い頭巾も目隠しも着けていなかった。彼のすぐ傍らにいた目撃者の話によると、サダムは死の一歩手前にあって不安そうに恐怖心さえあらわにしながらも、コーランをしっかりと抱え、非難めいた言葉を発した。ムクタダ・アルサドルの死の軍団の戦士だと伝えられるシーア派のガードマンたちを睥睨してから、アラーの神を称えながら階下で絞首台を取り囲む証人たちを一瞥し、こう叫んだ。「俺のいないイラクなんて、無一物だ。」 'An important milestone' Like the war that overthrew him in 2003, the hanging of Saddam Hussein did not turn out as planned. Instead of a study in modern justice, the tyrant's end looked more like the result of a sectarian show trial. From Crawford, the only comment was a muted, written statement: no proclamation of "mission accomplished," just of "an important milestone" after "a difficult year for the Iraqi people and for our troops." The best that could be said was that the trial was fairer than those Saddam gave his many enemies. ブッシュ「歴史の重要な一里塚」 2003年に権力の座から追放したイラク戦争と同様、サダム・フセインの絞首刑は計画通りには運ばなかった。近代法の踏襲というよりも、むしろこの独裁者の末期は、派閥抗争の見せしめの裁判劇が終幕を迎えた趣きに見えた。クロウフォード牧場から発表されたブッシュの声明は、終始押さえたトーンで書かれたたった1ページの紙切れだった。バグダッド陥落後、艦上で挙行された戦勝ページェントでの「Mission accomplished/使命完了」といった華々しい勝利宣言もなく、その書面には「イラク国民と我が軍の困難な時局後に迎えた重要な一里塚」と記されたのみである。文中であえて最良の箇所を探すとすれば、「サダムの裁判は、彼が敵対勢力に下した判決よりも公正であった。」という一文がせめてもの事実に即した価値評価であろうか。 Three decades of totalitarian rule Saddam Hussein's savage totalitarian rule lasted more than three decades. Torture and murder were his métiers, both practiced without evident remorse or the slightest regret. (Telling a joke about Saddam was a capital crime in his Iraq.) His arrogance led him to disastrous misjudgments. He launched a war against Iran that lasted eight years, and one against Kuwait that ended with his humiliating defeat in Desert Storm. 30年にわたる恐怖政治 サダム・フセインの暴虐な全体主義的支配体制は、三十年以上にわたって続いた。拷問や殺戮は彼のメティエール (専門業・得意技)であり、どちらの場合も遂行するにあたっては、罪の意識も後悔の逡巡も一片たりとも見せなかったという。(サダムに関してジョークを言う事さえ、彼の統治下のイラクでは最高刑を科された。)ひとの意見を聞かない彼の傲岸な性格は、自滅的な誤った政治判断を招いた。隣国イランに対しては戦争を仕掛け、8年間にわたって手こずった。また同様にクウェートを侵略し、その結果湾岸戦争として米軍を相手に巻き込み大敗した。 He dreamed of imposing himself on the region with weapons of mass destruction, and acted as though he had them even when he didn't. He kept his distance from Al Qaeda, but aided and abetted many other terrorist groups. And he annihilated would-be rebels—along with their extended families—killing tens of thousands of Shiites and Kurds with guns, bombs, chemical weapons: whatever worked. If the evil that men do lives after them, then Saddam Hussein will long endure. 圧殺の砂漠 彼の野望は、大量殺戮兵器を所有する大国の列に連なる事であり、事実に反して所有してもいなかったのに、あたかもすでにWMDがあるかのようにうそぶいた。アル・カイダとは距離をおきながらも、他のテロリストグループへは援助の手を伸べテロ活動を鼓舞した。また反対勢力に対しては、本人と家族はもとより、遠い親族にいたるまですべからく圧殺した。反サダムのシーア派やクルド人は、銃殺、爆死、化学兵器による毒ガス死など、手段を選ばずに何千人もが殺戮された。もし本人の死後もそのたたりがこの世に長く生きながらえるというならば、サダム・フセインの悪行こそ末永く語り継がれるだろう。 Unifying Iraq and balancing Mideast But the much more complicated question for now and for the future concerns the "good" he achieved, which may well have been interred with his regime. At a terrible cost, but with ruthless efficacy, he kept Iraq unified and provided a critical balance of power against Iran. If the Middle East is to be stabilized, and American long-term interests protected, those goals are still critically important. 国家統一と中東の勢力均衡 しかし、それよりももっと込み入った問題がイラクの行く末に立ちはだかっている。サダムの支配下で遂行された「善行」ともいえる業績がそれである。持ち前の残虐の限りを尽くしてすさまじい犠牲を払った末に、とにもかくにも彼はイラクを近代国家として統一したのだ。その結果イランと拮抗する勢力が出現し、近隣諸国での抗争が絶えなかった中東に勢力均衡による平定をもたらし、アラブ安定化時代の訪れに一役買ったのも、歴史が頷く事実である。<抄訳 ysbee> ▶ Newsweekのサイトでこのあとの原文記事を読む ◀ ブログ村ランキングにぽちっとひと押し ◀ 人気blogランキングへ一票 ◀ 今年は少しがんばろう! ◀ もうひとつよろしく! .......................................................................................................................................... クリストファー・ディッキー 上述の『World News』の他にニューズウィーク誌の名物コラム『SHADOWLAND』を執筆するのは、ハードボイルドな筆致と巧みな比喩、卓越した洞察力で、主に中東情勢を中心に外交問題を小説のように読ませる、クリストファー・ディッキーである。文系の大学教授のような風貌で、詩人の父をもち、中東や欧米のハイソサエティや外交官たちとも親交の深い、アメリカの知性派ジャーナリストを代表する紳士でもある。 どうも普段からイタリーと中東を行き来しているような状況らしく、米国のテレビに登場する事は稀。しかし一度彼のコラムを読むと、レイモンド・チャンドラーの探偵小説を読むような響きのよい惚れ惚れとする美文に出くわし、本題そっちのけで暗唱する事もたびたび。昨年の夏もレバノン戦争勃発前のきな臭い中東からのレポートを数回にわたって紹介したので、もしかしたらどなたかすでにお読みになったかも知れない。米流時評が自信を持って推薦するジャーナリストのひとり。 『楽園通信』で紹介したクリストファー・ディッキーのコラム 注: 彼のひねりの利いたコラムタイトルは、日本語に訳すと意味不明になり英語圏人にしか通用しない凝った名前が多いので、私流に勝手に付けたページタイトルになっています。 ▶ 5/12号「イラン人の手紙・アラビア半島逆ドミノ理論」 ▶ 5/13号「恐怖の三題噺 第1話 / 9.11・イラク戦争・石油危機」 ▶ 5/14号「恐怖の三題噺 第2話/イラン・核武装・第二次冷戦時代」 ▶ 5/15号「恐怖の三題噺 第3話/不法入国・国境警備・軍国主義化」 ▶ 10/5号「中東を塗り替える悪魔の地図/ネオコンの描く新世界」 ▶ 10/10号「平壌シンドローム/被爆したブッシュ外交 北朝鮮核実験・第三報」 楽園通信ご愛読のみなさまへ より迅速な情報発信のため、12/30号より日刊のブログはこちらのexblogで発行いたします。掲載記事はまとめて、従来の本誌へ保存版として掲載します。今後とも日刊『米流時評』、月刊『楽園通信』共に引き続きご愛読くださいますよう、よろしくお願い申し上げます。 <編集長 ysbee> 以下ブログの本誌です: ▶『楽園通信』本誌カバーページ ▶『楽園通信』全記事アーカイブ ▶『楽園紀行』イタリー編トラベローグ ▶『楽園百撰』ハワイのベスト100 ▶『米流時評』コラム「傷だらけの星条旗 / 米国ジャーナリズムの良心」 #
by ysbee-Mac
| 2007-01-02 19:10
| イラク戦争
ニューズウィークの俊英ファリード・ザカリアのグローバル評論「勝者の復讐」 捕囚から裁判、そして処刑へ。サダムの生涯でも最期の章は、まるでアメリカのイラク占領の哀れな比喩でもあるかのようだ。正しかれと思ってやった事が大変な過ちになってしまうという帰結。 French Official Visits Iraq After Years-Long Chill Foreign minister's trip symbolizes Sarkozy's efforts to improve ties with U.S. NEWSWEEK INTERNATIONAL | JAN. 8, 2007 ISSUE | Translation by ysbee The saga of Saddam's end — his capture, trial and execution — is a sad metaphor for America's occupation of Iraq. What might have gone right went so wrong. __________________________________________________________________ JANUARY 1, 2007 | 米 流 時 評 | ブログ雑誌『 楽 園 通 信』デイリー版 N e w s w e e k | M S N B C . c o m 「勝者の復讐」サダム処刑とアメリカの大罪 米国時間 2007年1月1日 | ニューズウィーク 1月8日号掲載 | 訳:『米流時評』ysbee 1. A historically brutal regime It is worth remembering that Saddam Hussein was not your run-of-the-mill dictator. He created one of the most brutal, corrupt and violent regimes in modern history, something akin to Stalin's Soviet Union, Mao's China or Kim Jong Il's North Korea. Whatever the strategic wisdom for the United States, deposing him began as something unquestionably good for Iraq. 歴史に残る暴虐の政権 サダム・フセインがそんじょそこらのありきたりの独裁者ではなかったという事実は、特筆に値する。彼は、近代史の中でも最も非情で腐敗した暴虐の政権を築き上げたが、それはスターリン下のソ連、毛沢東の中国、金正日の北朝鮮と何かしら共通する。米国にとっての戦略的価値が何であれ、彼を排斥することはイラクにとって疑問の余地もなく良き事として始まったはずだった。 2. Death of the State But during those crucial first months, Washington disbanded the Iraqi Army, fired 50,000 bureaucrats and shut down the government-owned enterprises that employed most Iraqis. In effect, the United States dismantled the Iraqi state, leaving a deep security vacuum, administrative chaos and soaring unemployment. That state was dominated by Iraq's Sunni elites, who read this not as just a regime change but a revolution in which they had become the new underclass. For them, the new Iraq looked like a new dictatorship. 国家の消滅 イラク戦争冒頭の貴重な萌芽期に占領国の米国が実施した事と言えば、イラク陸軍解散、5万人もの政府職員解雇、国営企業の閉鎖である。しかもその国営企業にはイラク人のほとんどが雇用されていたにもかかわらずである。その結果、アメリカは国家としてのイラクを解体してしまった。残されたものは、治安の無法地帯、行政の混乱、失業者の急増である。 以前の国家はイラクのスンニ派エリートが独裁していたが、彼ら自身が新しい時代の下層階級に転落する事によって、今回の変遷は単なる政権交代というよりも国家革命であると読み取っている。彼らにとって、新生イラクはもうひとつの新しい独裁政権に過ぎない。 3. Ideology of Bushism Why Washington made such profound moves with such little forethought remains one of the many puzzles of the Bush administration's foreign policy. Some of the decision making was motivated by ideology: ・Baathism equaled fascism, so every school teacher who joined the Baath Party to get a job was seen as a closet Nazi; state-owned enterprises were bad, the new Iraq needed a flat tax, etc. ・Some of it was influenced by Shiite exiles who wanted to take total control of the new Iraq. ・Some of it simply reflected the bizarre combination of ignorance and naivete that has marked the policies of Bush's "tough guys." ブッシュイズム外交方針 では何ゆえに米国政府は、そのような短絡思考に基づいてそんなにも致命的な動きをとったのかという理由は、ブッシュ政権の外交政策にまつわる数々の疑問のひとつとして謎に包まれたままである。ブッシュの方針決定のいくつかはイデオロギーに動機づけられている。その実例をいくつか挙げてみる。 ・「バース思想はファシズム」従ってバース党に所属していながら学校の教師の職に就いた者は、すべて「隠れナチ」と見なす。 ・国営企業というのは間違っている。新生イラクの企業には均一税を課すべきである。……等々。 こういった一部の方針は、新生イラクを牛耳ろうと企んでいたシーア派の亡命者に影響されて実施された。(ここで言う亡命者の代表的存在としてはチャラビがいる。) ・幾例かはブッシュの「タフガイ外交」の特徴である「無視と無知のおぞましい組合わせ」を端的に反映している。 4. Sectarian nature of its policies' The administration has never fully understood the sectarian nature of its policies, which were less "nation building" than they were "nation busting" in their effects. It kept insisting that it was building a national army and police force when it was blatantly obvious (even to columnists) that the forces were overwhelmingly Shiite and Kurdish, mostly drawn from militias with stronger loyalties to political parties than to the state. 内乱の温床となった政策 ブッシュ政権はこれらの方針が内包する国家分裂の芽を、充分に認知していなかった。これらの政策は、結果的に国家再建というよりも国家崩壊に寄与する事となった。政策の目的は新生イラクの軍隊および警察の設立ということに固執し続けている。しかし創設当初から、これらの軍団は圧倒的にシーア派とクルド人で占拠されているのは誰の目にも(米国内のコラムニストにさえ)明らかであり、主として国家への忠誠というよりも、所属する政党への忠義心の方が強い叛徒によって構成されている実状だ。 5. Isolation of Sunni magnets al-Qaida The answer to these fundamentally political objections was technocratic: more training. But a stronger Shiite Army made—makes—the Sunni populace more insecure and willing to support the insurgency. Iraq's Sunnis are not the good guys in this story. They have mostly behaved like self-defeating thugs. The minority of Sunnis who support Al Qaeda have been truly barbarous. The point, however, is not their vices but our stupidity. 孤立したスンニとアルカイダの結束 これらの根本的行政に対する反論への回答は、あくまで官僚主義的である。「より多くの訓練。」しかし強力なシーア派軍団ができた結果、現在も進行中だが、スンニ派の市民はより身の危険を感じるようになり、新政府への叛乱をあえて支持する側につかせる結果となっている。 イラクのスンニ派はこの件に関しては悪人の立場である。彼らは大抵の場合、自滅型のならず者のように振る舞う。アルカイダを支持したスンニの少数派は、まさしく野蛮な連中だった。しかしながら肝心なのは、イラクの惨状をつくったのは彼らではなくて我々米国の愚かさだったという点である。 6. Strategy to prevent an rebellion We summarily deposed not just Saddam Hussein but a centuries-old ruling elite and then were stunned that they reacted poorly. In contrast, on coming into power in South Africa, Nelson Mandela did not fire a single white bureaucrat or soldier—and not because he thought that they had been kind to his people. He correctly saw the strategy as the way to prevent an Afrikaner rebellion. 旧体制の戦略的継承法 我々はうかつにも、独裁者サダム・フセインだけでなく、数世紀にわたって支配の経験を継承してきたイラクのエリート階級まで、この国から結果的に排除してしまったのだ。これとは対照的に、かつて南アフリカ共和国での政権交代の際に、ネルソン・マンデラは旧体制の白人の政府高官や兵士たちをただのひとりも解雇しなかった。それは彼らが黒人に対して親切だったからという訳ではない。マンデラ首相は、よりアフリカ主義の反乱が起きるのを予め防ぐための手段として、正しい戦略を見つけたからだ。 7. Neocons blame on Iraqis It has now become fashionable among Washington neoconservatives to blame the Iraqis for everything that has happened to their country. "We have given the Iraqis a republic and they do not appear able to keep it," laments Charles Krauthammer. Others invoke anthropologists to explain the terrible dysfunctions of Iraqi culture. ネオコン「すべてはイラク人のせい」 ワシントンのネオコンの間では、今やあの国で起った事はすべてイラク人のせいだと避難するのが流行になってしまった。「我々はイラク人に民主国家を与えたが、彼らはそれを維持できないと見える。」こう嘆くのはチャールズ・クラウサマーである。他の者は風俗学者の説を借りて、イラクの因習が影響した結果の恐ろしいほどの社会的無機能ぶりを指摘する。 8. Not a republic, but a civil war There may be some truth to all these claims—Iraq is a tough place—but the Bush administration is not quite so blameless. It thoughtlessly engineered a political and social revolution as intense as the French or Iranian one and then seemed surprised that Iraq could not digest it happily, peaceably and quickly. We did not give them a republic. We gave them a civil war. 共和国ではなく市民戦争を創出 もしかしたら、それらの言すべてが真実かもしれない。たしかにイラクは大変な場所だ。しかし、ブッシュ政権がまったく非難の対象にならないという訳でもない。我々のとった措置は、イラクの政治的・社会的変革を、あたかもフランス革命やイラン革命と比肩できるほどとんでもなく過激に進めてしまったのだ。その結果、イラクがその変革をめでたく平和的に迅速に消化できないものだから、驚いているように思える。 我々は彼らに共和国を与えられなかった。我々が与えたのは内戦だった。 【米国時間 2007年1月1日『米流時評』ysbee】 記事リンク http://beiryu2.exblog.jp/4233367 TBリンク http://beiryu2.exblog.jp/tb/4233367 __________________________________________________________________ ニューズウィーク誌の国際版でトップライターとして活躍するファリード・ザカリア。通常は主にグローバル経済や国際外交の動向を追うForeign Affairsが専門分野である。しかし昨年来、彼の筆鋒はブッシュ政権の失態に向けられる回数が増えてきた。記憶に新しくまたもっとも鮮やかに攻勢を決めたのは、昨年10月末中間選挙の直前に発行されたイラク戦争特集の記事である。 そのタイトルも「Rethinking Iraq: The Way Forward/イラク再考・この道の前途」である。この号の表紙には、イラクの荒野をとぼとぼと歩む4人の米兵のモノクロ写真があり、それにこのタイトルがオーバーラップしていた。地獄の様相を呈するイラクの現状打破を切望するアメリカ国民にとっては、つい手を取らずにはいられない待望の書であった。内容は驚くほど具体的な政策転換の提案書で、今振り返ってみると、そのひと月後に頒布したイラク研究会の白書に先行して、ドラスティックな現実的実行案が説かれた啓蒙のコラムであった。イラク問題解決のキーワード「The Way Forward」も、こちらの方がひと月早い。さすがNewsweek! Newsweekのサイト上で公開されたのは10月30日で、私的にも選挙のキャンペーンで多忙なスケジュールの真っ最中だったので、本誌「楽園通信」の記事で紹介はしたものの、翻訳する暇がなく据え置きになっていた記事である。英語に自信のある方にはぜひ一読をおすすめします。こういうBrainyなリアリストの立案家がマスコミで活躍しているのはありがたい限りだが、むしろ「No Brain」でネオコンの言いなりの張り子の虎であるブッシュ政権が、今もっとも必要としている人材ではなかろうか。 NewsweekをはじめWashington Post、MSNBC等のNBCニュース系ネットワークは2006年来「対ブッシュ」を明らかにしており(良識を守って「反ブッシュ」までは走っていないが)、総選挙で民主党が圧勝してからは、ますますその色を濃くして来ている。国民もどちらが正義の衣をまとっているかは言わずもがななので、昨今このネットワークへの聴取率はニュース系でトップに躍り出た。2008年の大統領選までブッシュの無能政治が存続する限り、このネットワークへの視聴者への信頼感は減る事を知らないだろう。 インタラクティブなメディアを目指し、人気番組別にブログ形式をいち早くサイトに取り入れたのも、MSNBC.comがMSM(Main Stream Media=大手マスコミ)では最初。現在はYou-Tubeと同様に放送直後のニュースビデオをネット上で見たりシェアしたりできるようになった。そのうち数年を待たずにテレビと同時放送をPCのモニターや携帯でチェックできる日がくるだろう。毎日まず最初に開けるニュースサイトとしてますますお役立ちの、米国のいち押しメディアです。(広告料はもらってませんよー) 【米国時間 2007年1月1日 『米流時評』ysbee】 __________________________________________________________________ ▼ クリックしてブログの各ランキングへのご投票を、どうぞよろしくおねがいします! みなさまのおかげで2つのランキングでトップになりました。ご愛読たいへんありがとうございます。 おかげさまでトップをキープです! 政治ブログに参加しています よろしく! 全国区はきびしい 11〜15位あたりですがぽちっ! こちらもトップをめざしてクリック! テクノラティはお気に入りブログの更新内容が一覧できて大変便利です __________________________________________________________________ 5月からの『米流時評』へ 以下2006年版本誌『楽園通信』です ▶ 本誌『楽園通信』カバーページ ▶『楽園通信』全記事アーカイブ ▶『楽園紀行』イタリー編トラベローグ ▶『楽園百撰』ハワイのベスト100 『米流時評』自選コラム・ベスト3 ▶ 傷だらけの星条旗/米国ジャーナリズムの良心 ▶ 米国式濃縮ニュース解説/風に聴け精神よ何処へ ▶ 西暦2003年のコマーシャル/広告と戦争のはざまで #
by ysbee-Mac
| 2007-01-01 15:13
| イラク戦争
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